:
1
秘湯の島ユートピアでバカンスを楽しむため、温泉オリエンテーリングに参加したあたしらは……
なんか知んないけど、おかしくなった連中に追いかけ回された。
で、どうにか町に戻ってきたら、町の連中もみんな温泉ゾンビになってた……
シャルロット :
ってな感じか……
キャトラ :
状況整理、ありがとう、シャル。
ビスケッタ :
やべーこと起こってるヨ!どうにかしないと、ホームに帰れないネ!
イズネ :
センセイたちを元に戻さないと……
ヨナ :
兄さん……
シャルロット :
なんか手がかりとかねーのか?おかしくなった原因とかわからないと、どうにもならなくね?
ヨナ :
まずい!
イズネ :
どうしましたか?
ヨナ :
……囲まれてる。
レイガ :
湯当たりにはお気をつけくださーーーい‼
温泉ゾンビたち :
湯冷めにもーーーー‼
キャトラ :
ぎにゃーーーー!逃げられないわ!
ヨナ :
くっ!兄さん、正気に戻って‼
レイガ :
ユートピアよいとこ♪一度はウェルカム♪
温泉ゾンビたち :
ウェルカム!
ビスケッタ :
つかまっちまったヨ!こいつら、無駄にマッチョ!
シャルロット :
クッソ! 逃げられねぇ……腐っても傭兵団か……
レイガ :
湯もみよいこと♪一度はハズカム♪
温泉ゾンビたち :
ハズカム!
イズネ :
どこに連れてくつもりですか……?
レイガ :
風呂は一番♪あなたとハニカム♪
温泉ゾンビたち :
ハニカム!
キャトラ :
ぎにゃーーーー!こいつら、あっつあつの源泉に運ぶつもりよ‼
シャルロット :
ちょっ! あそこに放り込むつもりか!
ビスケッタ :
やめろーーー!火傷しちゃうヨーーー‼
??? :
——急急如律令‼
シャルロット :
これは——
ビスケッタ :
メニメニー、ピンポン球だヨ!
レイガ :
温泉卓球はじめぇぇっ!
ヨナ :
ピンポン球に反応してる……?
温泉ゾンビたち :
サーブ! スマッシュ‼
キャトラ :
解放されたわ!
ヨナ :
違う、これ、ピンポン球じゃない!
……煙幕!
??? :
みなさん! こちらへ‼
イズネ :
今は逃げましょう!
:
2
シャルロット :
はあ、はあ、振り切ったか……
キャトラ :
いったい、あれはなんなの?トワ!
トワ :
…………
まだ、ここも安全ではありません。ついてきてください。
イズネ :
ホテルの温泉?
トワ :
こちらです。
ヨナ :
ここは?いろんなパイプとかあるけど。
トワ :
ホテルの温泉は掛け流しではなく循環式ですので……こっちです。
ビスケッタ :
なんだヨ、ここ‼
??? :
温泉レジスタンスの基地だ。
シャルロット :
誰だ、おまえ……?
ユバーナ :
私は[0F7319]ユバーナ[FFFFFF]。この島を温泉から解放するためにレジスタンスとして活動している者だ。
ビスケッタ :
温泉レジスタンスってなんだヨ?
トワ :
この島は温泉に支配されてるんです。
シャルロット :
なに言ってんの?
ユバーナ :
君たちも聞いたことがあるかもしれないが、この島は昔、寂れていた。
娯楽も何も無い。あるのは、なんの整備もされてない天然の風呂だけ。
我々、島の民は温泉を神格化し、崇め奉っていた。その信仰の際たるものが温泉の神<[AC0D0D]ゴールデンの湯[FFFFFF]>信仰だった。
つかった者の願いを叶える神の湯。その噂話が島の外にも広がり……
冒険家たちが島を訪れるようになった。
この島が観光地として栄えるのは、あっという間だったよ。
島の外から様々な観光客が訪れ、島民も喜んでいた。だが、同時に我々は失っていった……
温泉への信仰を……
それからだ。島の連中からおかしな奴が出てきた。
ヨナ :
温泉ゾンビ……
ユバーナ :
ああ、温泉負けした連中は、君たちを襲った奴らのように、温泉に支配されてしまう。
トワ :
いわゆる呪いのようなモノです。
イズネ :
では、どうして私たちだけ無事なのですか?
ユバーナ :
君たちは、きちんと百秒以上、温泉につかっていたのではないかね?
ビスケッタ :
けっこうな長風呂だったヨ。
ユバーナ :
温泉にきちんとつかることで、呪いの進行が遅れる。当然だ、それが我々の温泉信仰の礎だからな。
トワ :
ですが、一度でも温泉につかった者は、遅かれ早かれ温泉ゾンビになってしまうんです。
ビスケッタ :
マジかヨ……
ユバーナ :
温泉オリエンテーリング……多くの温泉をまわるために、湯につかる時間は短くなる……
全ては温泉が仕組んだ罠だ。
そう、この島は温泉ユートピアではない……
温泉ディストピアだったんだ‼
温泉のたくらみに気づいた我々は、こうして地下に潜り、レジスタンスとして活動を続けているというわけだ。
シャルロット :
昨日までまともだったんだし、別に地下に隠れる必要なくね?
ユバーナ :
この島はディストピアだ。どこにでも温泉の目はある。
まともに見えても温泉ゾンビが擬態している可能性もあるんだよ。
イズネ :
ど、どうしたら、温泉ゾンビになった人たちを助けられるんですか?
ユバーナ :
温泉に打ち勝つ他ない。
イズネ :
…………
ヨナ :
どういうこと?
ユバーナ :
スタンプのあった温泉。奴らが温泉幹部。その幹部を打ち倒し……
温泉神<[AC0D0D]ゴールデンの湯[FFFFFF]>を打ち倒し、呪いを解くしかないんだ!
ビスケッタ :
具体的にどうしたらいいんだヨ?
ユバーナ :
それはわからん。
ビスケッタ :
終わってんじゃねーか。
ユバーナ :
だが、急がねば、我々もいずれ温泉ゾンビになってしまう。
島全体が温泉に支配された今、我々も反撃作戦を開始する。
君たちはどうする?
イズネ :
やります。
センセイたちを元に戻さないと。
ヨナ :
うん、兄さんたちをあのままにはしておけない。
ビスケッタ :
ミトラたちをゾンビのままにしとくのは忍びないネ!
シャルロット :
しゃーねーな!優勝して超高級ビーフを食うまで帰るわけにはいかねーし……
キャトラ :
やりましょう!アタシたちでみんなを救いましょう‼
:
3
ユバーナ :
総員傾注‼
これより我々は温泉から全てを解放すべく戦う‼
三大温泉幹部をくだし!温泉神<[AC0D0D]ゴールデンの湯[FFFFFF]>を打ち倒すのだ!今のディストピアをかつてのユートピアに‼
レジスタンスたち :
風呂! 風呂! 風呂‼
ユバーナ :
今までもゴールデンの湯に挑み、散っていった仲間たちのためにも必ずや勝利を‼
レジスタンスたち :
うおおおおおおっ‼
ユバーナ :
総員出撃!温泉に負けるなっ‼
イズネ :
ゴールデンの湯がどこにあるか、知っているんですか?
ユバーナ :
ああ、場所は既に特定している。だが、挑んだ者は皆、温泉ゾンビに変えられた。温泉組合長もかつての同志だ。
ヨナ :
どうやって温泉を倒すつもりなの?
ユバーナ :
トワさん、説明してくれませんか?
トワ :
三大温泉幹部とゴールデンの湯はソウルの流れで繋がっています。
パリピの湯、ツルツルの湯、レインボー湯の三つもまた温泉神の一部と言っても差し支えありません。
三大温泉幹部を倒し、ゴールデンの湯の効能を弱体化させねばなりません。
ユバーナ :
そういうことだ。
ヨナ :
……どういうこと?
トワ :
呪いというのはある種の概念。信仰を打ち砕くには、その力を否定するんです。
すなわち温泉の効能の否定です。湯につかりながらも、その効能に屈することがなければ、こちらの勝ちです。
シャルロット :
よくわかんねーけど、とりあえず温泉に入れってこと?
トワ :
はい。
ユバーナ :
行くぞ! 私に続けぇぇぇっ‼
レジスタンス :
温泉ゾンビの集団を確認!射的用意‼
ユバーナ :
射てぇぇぇっ‼
ヨナ :
え? 射的の空気銃?
温泉ゾンビたち :
ぐわわわわわ!
イズネ :
効いてます!
ユバーナ :
温泉ゾンビに効果があるのは温泉に関連するモノだ。温泉卵を!
レジスタンス :
おら! これを食ってろ!
温泉ゾンビ :
温泉卵、待て〜……!
ユバーナ :
よし! 道が開いた!進めぇぇっ‼
レジスタンス :
やめろ! 離せぇぇっ!
温泉ゾンビ :
源泉掛け流し〜!
キャトラ :
あのひと、大丈夫なの⁉
ユバーナ :
今は振り返るな!振り返るわけにはいかないんだ!
ビスケッタ :
こなくそ! 杖振って玉を出すヨ!
レジスタンス :
御武運を!
ビスケッタ :
ゾンビごと川に落ちたネ!
トワ :
ユートピアの川は全て温泉です。みなさんは私たちを守るために……
レジスタンスたち :
うおおおおおおっ‼源泉掛け流し〜〜〜〜‼
キャトラ :
みんな……
ユバーナ :
進め! 犠牲の分だけ進むんだ‼
イズネ :
あっ! パリピの湯です!
ヨナ :
走ろう‼
レイガ :
ヨナーーーーー!温泉卵食べろーーー‼
ヨナ :
兄さん⁉
ユバーナさん⁉
ユバーナ :
行くんだ!
ヨナ :
でも⁉
ユバーナ :
黙っていたが……私たちは長くはない……体が勝手に温泉卵を食ってやがる……ムシャムシャ……
もう私も温泉ゾンビになりかかっているのだよ。
行け‼ この温泉ディストピアをかつてのユートピアに戻してくれ‼
お前ら、まとめて私の長風呂につきあうんだな‼
ヨナ :
兄さんたちごと……
イズネ :
……川に。
キャトラ :
…………
行きましょう……
アタシたちが温泉を倒すのよ‼
ビスケッタ :
よくわかんないけど、とりあえずパリピの湯を倒すネ!
:
4
ビスケッタ :
到着したヨ!
ヨナ :
温泉につかろう‼
シャルロット :
ふぅ……あったまるぅ……
観光客 :
ふぅぅ! レッツダンシン‼
キャトラ :
やっぱり、この温泉……自然とテンションがアガってくわね……
ビスケッタ :
ボクも踊りたくなってくるヨ……
ヨナ :
……温泉を打ち倒すとか、結局、どういうことなの?
トワ :
効能に打ち勝つとしか……ただ、否が応でもテンションがアガってくのを感じます。
温泉ゾンビ :
ひゃっふぅぅぅ!
ビスケッタ :
すごく楽しそうだヨ……
シャルロット :
もうダメだ!あたしも踊っ——
ヨナ :
ダメだよ、シャルロット!
シャルロット :
でもさ……
ヨナ :
どうしたら……
イズネ :
…………
ビスケッタ :
イズネはどうして平気な顔してんだヨ⁉
イズネ :
……ネガティブなことを考えてました。
このままセンセイたちが助からなかったらなどと、いろいろ考えていたら、テンションがアガるどころの話ではなくて……
ヨナ :
ネガティブなことを言い合おう!
この高いテンションに水を差す感じのことを言い合えば——
シャルロット :
——テンションはアガらない!
ビスケッタ :
そんなもんか?
トワ :
やってみる価値はあるかと!
イズネ :
……旅行でご飯はおいしい。でも、食べすぎてしまい、体重が増えてるかもしれません。
温泉ゾンビ :
体重なんて気にしなーい!
キャトラ :
そうやって目の前の現実から目を背けた先に待ってる未来、きちんと考えたことある?
シャルロット :
い、今がよければいいし!
ビスケッタ :
おめーがダメージ食らうなヨ。
ヨナ :
傭兵稼業もいつまで続けられるんだろ?安定した職に就いておかないと未来が不安……
ビスケッタ :
ガチのやつだネ……
シャルロット :
あたしは御子っつー永久就職先があるし。
ヨナ :
本当にそう思ってるの?シャルロット。
シャルロット :
当然だろ?御子は死ぬまで御子じゃん?
ヨナ :
あなた、御子らしいこと、きちんとしてる?そのうちみんなにそっぽを向かれるんじゃない?
シャルロット :
み、御子がダメなら、冒険家で食ってくし!
ヨナ :
冒険家なんてその場限りの日雇いでしょ!なんの保証も安定も無いんだから‼
冒険家たち :
…………
トワ :
見てください!温泉ゾンビの方々が!
イズネ :
専業冒険家の方々に、ヨナさんの発言はダメージ大きいのかもしれません……
温泉ゾンビ :
就職しようかな……
ビスケッタ :
ボクの将来にもなんの保証もねーな……人生、シャボン玉だヨ……
キャトラ :
アタシたちも未来のこと、きちんと考えないといけないのかも……
シャルロット :
もう少し御子、真面目にやろう……
イズネ :
みなさんのテンションが、どんどん落ちてます!
トワ :
ヨナさん! トドメを‼
ヨナ :
トドメ⁉ あ、うーん……
あ、ちなみに冒険家って職業だと、基本、保険も入れないし、借金や融資、断られるから。
社会的信用、ゼロだよ。
イズネ :
みなさん、倒れないでください!
ヨナ :
まあ、傭兵はもっと低いけど……
トワ :
自爆⁉
シャルロット :
ていうか、なんでイズネやトワは平気なんだよ?
イズネ :
私はドミティア島で島長としての仕事がありますし。
トワ :
真面目に巫女をしていますから。
ビスケッタ :
裏切りもの……
キャトラ :
アタシたちへのダメージも大きかったけど、みんなのテンションも死んだわ……
トワ :
温泉のお湯が‼
イズネ :
魔物の形に⁉
パリピの湯の精霊 :
テンションをアゲろぉぉぉ!足湯でハッピー‼
シャルロット :
なんだよ、あれ‼
ヨナ :
よくわかんないけど、とりあえず倒そう‼
:
5
パリピの湯の精霊 :
ぐわわわ‼テンションが……アガ……ら……ない……
ヨナ :
倒したの?
トワ :
はい。パリピの湯の効能には打ち勝てたかと……
ビスケッタ :
ほんとかヨ?
トワ :
ソウルの流れが断たれたのを感じます。
イズネ :
はい、私もたしかに感じています。
温泉ゾンビ :
……就活しよ。
シャルロット :
温泉ゾンビのテンションもさがったままだな……
キャトラ :
この隙に次の温泉を目指しましょう!
ヨナ :
次の温泉は⁉
トワ :
ツルツルの湯です!
ユバーナ :
温泉卵を食えーーー‼
温泉レジスタンスたち :
湯もみをしろーーー‼
イズネ :
みなさんも温泉ゾンビに……
ヨナ :
あの人たちの犠牲を無駄にしないためにも、私たちが温泉を倒す!
ビスケッタ :
寄らば杖でぶっ叩くヨ‼
シャルロット :
しゃーねー!いっちょやったるかね。
:
6
ビスケッタ :
ツルツルの温泉についたヨ。
ヨナ :
よし、入ろう!
シャルロット :
ふ〜……戦闘の疲れが取れるなぁ……
トワ :
肌がツルツルになっていきます。
イズネ :
この効能、どうやって克服したらいいの?
シャルロット :
そうだよな。お湯につかれば、嫌でも肌がスベスベになるし……
キャトラ :
たしかにそうね。でも、温泉をやっつけないと……
ビスケッタ :
ボクに妙案があるヨ!
パリピの湯で気づいたけど、けっこう強引な方法で、温泉の効能をブチのめせるネ。
キャトラ :
まあ、たしかにね。否定はしないわ。
ビスケッタ :
屁理屈まくしたてて、温泉の効能は効かないってアピールするヨ。
シャルロット :
でも、実際、ツルツルになってんだろ?
ビスケッタ :
アカスリとかパックをするネ!
ヨナ :
それだと余計にツルツルになるんじゃないの?
ビスケッタ :
温泉のツルツルをアカスリとかパックで上書きするんだ。それで、温泉の効能じゃないって言い張る!
ヨナ :
ものすごい屁理屈……
ビスケッタ :
そんなもん、パリピの湯の時も同じだろ!
トワ :
ものは試しです。やってみるしかありません。
イズネ :
でも、アカスリとかパックとか、道具はどこに?
トワ :
その辺の道具は一式揃えています。
シャルロット :
なんで?
トワ :
温泉を十全に楽しむためには必要かと……
キャトラ :
とにかくやるわよー‼
ビスケッタ :
とっとと横になるネ!ボクがアカスリしてやるヨ!
シャルロット :
本当にできんのか?
ビスケッタ :
マッサージもしながら、やってやるヨ!ごしごーし!
シャルロット :
……マッサージ、うまいじゃん。
ビスケッタ :
昔シショーに死ぬほど揉まされたヨ……
トワ :
では、パックは私が。お二人とも、横になってください。
ヨナ :
なんでキュウリ⁉
トワ :
キュウリパックです。
イズネ :
キュウリ、持ち歩いてたんですか?
トワ :
細かいことはいいので、横になってください。
では、参ります。
ヨナ :
キュウリがひんやりしてて……
イズネ :
なんか不思議な気分です……
ビスケッタ :
パックしてる間、ボクもアカスリしてやるヨ!
ヨナ :
マッサージが……
イズネ :
……気持ちいいです。
シャルロット :
肌が……
ヨナ :
卵みたいに……
イズネ :
……キラキラになりました⁉
トワ :
これがキュウリパックとアカスリの力です。
ビスケッタ :
温泉のツルツルには負けないネ‼
キャトラ :
温泉のお湯が‼
ビスケッタ :
効能をブチのめしたみたいだヨ!
ツルツルの湯の精霊 :
湯上り卵肌ぁぁぁっ‼
イズネ :
来ます!
:
7
パリピの湯の精霊 :
ぐわぁぁぁっ!湯上り……卵……肌……
トワ :
倒せたようですね。
ビスケッタ :
これにて一件落着‼
ヨナ :
次の温泉は……
イズネ :
レインボー湯です!
キャトラ :
急ぎましょう‼
温泉ゾンビたち :
湯上り卵肌〜‼
トワ :
まずいです!温泉ゾンビが、スベスベの肌に反応を!
ビスケッタ :
あいつら、なんにでも反応するな。
レイガ :
ヨーナー!湯上り卵肌ーー!
ヨナ :
兄さん、ごめん‼
シャルロット :
容赦ねーな……
ヨナ :
行こう‼
温泉ゾンビたち :
湯冷めするなーーー‼
ビスケッタ :
あいつら、しつこいヨ!
ヨナ :
凍てつく闇に、散りなさい!
温泉ゾンビたち :
ぐわーーー‼
シャルロット :
お前、兄貴には容赦ねーな……
ヨナ :
兄さんは強いから、ゾンビになっても、あの程度、平気だよ……たぶん。
ビスケッタ :
白目剥いて痙攣してるヨ?
ヨナ :
きっと平気!先を急ごう‼
歌声 :
ユートピアよいとこ♪一度はウェルカム♪
ヨナ :
凍てつく闇に!散りなさいっ‼
温泉ゾンビ?たち :
ぎゃあああああああ‼
ゴエモン :
てめぇ! いきなりなにすんだ‼
ホメ様 :
湯冷めはベリベリバッドですね。
コング :
俺がファミリーでなければ、凍っていたぞ。
キャトラ :
アンタたち、正気なの⁉
コング :
当然、俺たちはいつだって正気だ。
ホメ様 :
みなさん、そんなに慌ててホワイ?プリーズ、テルミー。
イズネ :
実は……
:
…………
……
ホメ様 :
ワオ! 温泉ゾンビ⁉ノットワビサビですね‼
コング :
なるほどな、おかしくなったファミリーに襲われたのは、そういう理由か……
キャトラ :
アンタたちも長風呂だったの?
ゴエモン :
当然だ。体の芯まで温まらなけりゃあ、温泉とは言えねえ。
コング :
俺たちも力を貸そう。同じファミリーとしてな。
温泉ゾンビたちの声 :
ユートピアよいとこ♪一度はウェルカム♪
ホメ様 :
ウェルカム!
温泉ゾンビたち :
みつけた〜〜!
キャトラ :
ああ、もう!反応するんじゃないわよ‼
ホメ様 :
ベリベリソーリーですね。
:
8
ビスケッタ :
どうにか振り切ったみたいだネ。
シャルロット :
レインボー湯、遠いな……
ヨナ :
それでも先に進むしかない。
イズネ :
急ぎましょう。私たちもいつまで大丈夫か、わかりませんし……
トワ&ゴエモン :
ぐっ‼
キャトラ :
どうしたの⁉
トワ :
温泉卵を……食べたくなってきました……
ホメ様 :
イエス!温泉卵、ワビサビですね!
キャトラ :
どうして⁉トワだって長風呂だったでしょ⁉
トワ :
私はみなさんよりも多くの温泉を回っています。
その分、温泉の影響を強く受けたのかと……
ゴエモン :
まさか、この俺が温泉に負けるとはな……
ヨナ :
大丈夫なの?
コング :
……わからん。俺も可能なら、今すぐ湯もみをしたい。
ホメ様 :
湯もみ、ワビサビですね!ゴー、ホットスプリング!
ビスケッタ :
こいつら、変化あるのか、わかんねーヨ。
シャルロット :
あたしも温泉卵のこと、ちょっといいかもって思い始めてる。
でも、まだビーフのほうがいい!
キャトラ :
たしかに、アタシも黙ってたけど、ちょっとだけ温泉卵を食べたいって思ってるわ。
イズネ :
先を急ぎましょう。大丈夫です。気を強く持っていれば……
ヨナ :
レインボー湯に急ごう!
:
9
ビスケッタ :
そろそろレインボー湯だネ。
トワ :
レインボー湯の効能はつかった人を健康にします。お湯の成分はモゴネシウムに硫黄、鉄分……
キャトラ :
トワ、大丈夫?
トワ :
はい……まだ、どうにか……
イズネ :
もう少しでレインボー湯です。レインボー湯を倒せば、あとはゴールデンの湯だけ……
シャルロット :
でもさ、レインボー湯、どうやって倒すんだ?
あの温泉、入ったら、強制的に健康になるじゃん。効能を打ち消すとか無理じゃね?
ヨナ :
あえて不健康になってから入るとか?
ビスケッタ :
湯から上がった時の落差で死にたくなるヨ!
シャルロット :
それに不健康になって入ったら、むしろ効能が効きすぎるんじゃね?
ヨナ :
だったら、むしろ健康になって入るとか?
キャトラ :
どういうこと?
ヨナ :
健康な状態で入っちゃえば、温泉に入っても変わらないんじゃないかなって……
ビスケッタ :
それだヨ!冴えてるヨナ!
シャルロット :
でもさー、健康になるってどういうこと?今は走ったから疲れてるけど、普通にしたら普通じゃん。
イズネ :
疲れている状態で入るのはダメかもしれません。疲労している状態は不健康な状態ですし……
近くのロッジでゆっくり休み、体調を整えてからレインボー湯に入るのはどうでしょうか?
ヨナ :
温泉ゾンビは大丈夫?
コング :
秘湯エリアは観光客が少ない。温泉ゾンビの問題は無いだろう。
問題は俺たちファミリーが、どれだけ耐えられるかだ。
ゴエモン :
この温泉怪盗様が温泉ゾンビになるなんて、ちゃんちゃらおかしいぜ。
ホメ様 :
イエス!ワビサビのハートあるから、ノープロブレム!
トワ :
私もまだ大丈夫です。今日はゆっくり休み、英気を養った上で、レインボー湯に挑むべきかと。
キャトラ :
わかったわ。
これ以上ないくらい健康になって!明日の決戦に備えましょう‼
:
10
キャトラ :
明日に備えるのはいいんだけども……
健康になるって言っても、具体的になにをしたらいいのかしら?
ビスケッタ :
この中で一番健康的な奴の意見を聞けばいいネ。
イズネ :
私はもともと病気でしたし……
シャルロット :
しゃーねー、あたしの健康的な——
キャトラ :
シャルは食っちゃ寝だから、当てになんないわ。
ビスケッタ :
ボクは健康だヨ!寿司とか天丼とかうめーもん、いつもコッソリ食い放題ネ!
キャトラ :
ビスケッタも却下ね。
トワ :
傭兵をなさってるヨナさんなら、体が資本ですし、健康的な生活をしているのでは?
ヨナ :
え⁉ 私⁉
キャトラ :
たしかにヨナって健康的だもんね。アンタ、普段、どんな生活してるの?
ヨナ :
うーん、基本は早寝早起き。起きたら、軽くジョギングして体を動かす。
シャルロット :
……正気か?
ビスケッタ :
意識飛ばすほどショックなことかヨ?
ヨナ :
で、朝はたくさん食べるでしょ。あ、基本は野菜とタンパク質中心。午前は頭を使う作業をする。
お昼を食べたあと、午後は体を使う作業をする。で、暗くなってきたら夕飯食べて、お風呂入って寝るかな。
シャルロット :
修行僧?
イズネ :
たしかに健康的ですけど、充分、普通の生活スタイルかと……
キャトラ :
……とりあえず、夕飯食べる?食べないのも不健康だし。
シャルロット :
バーベキューにしようぜ!ビーフ食っときゃ健康っしょ!
どういうことだよ⁉
ヨナ :
なにが?
シャルロット :
なにがって!バーベキューなのにビーフがないとかおかしいだろ!
ビスケッタ :
ボクもシャルに賛成だヨ!野菜しか無い串は楽しくないヨ!
ヨナ :
夜は少なくすませるの。野菜メインね。お肉は基本、昼ごはんね。
シャルロット :
やだー! 三食ビーフがいい‼
ホメ様 :
ベジタブルオンリー!バッドワビサビですね!
コング :
贅沢を言うな、みんな、同じ飯を食べる。これこそファミリーだ。
シャルロット :
うぅ……終わったらビーフ食う……
ヨナ :
さ、寝よう。
キャトラ :
まだ寝るには早くない?
ビスケッタ :
夜はまだまだこれからだヨ!
ヨナ :
ジョギングのために朝早くに起きるから。逆算すると、このくらいの時間に寝ないと、充分な睡眠時間は確保できないでしょ?
シャルロット :
なに言ってんの?
ヨナ :
ショックだからって意識飛ばさないで。とにかく寝るの!
これが健康的な生活なんだから。
シャルロット :
逆に不健康だろーーー‼
ヨナ :
はい、起きて‼
ビスケッタ :
……もう朝かヨ……
シャルロット :
眠ぃ……
ヨナ :
朝、起きたらストレッチ。その後、ジョギング。
シャルロット :
ストレッチ⁉
ヨナ :
起きてすぐにハードな運動は体にも負荷がかかるから。だから、ストレッチしながら徐々に体も目覚めさせていく。
シャルロット :
あたしはまだ寝るーー!
ヨナ :
はい、足開いて!前屈ぅぅ……
シャルロット :
ぎゃー! いってぇぇぇっ‼
ヨナ :
ほら、歩かない。ファイト‼
イズネ :
ふっふ……こういう……生活も……悪くないですね……
トワ :
はっは……温泉卵……食べたい……です……
ビスケッタ :
はっは……ワザマエ……ハラキリ……
シャルロット :
もうやだ……
キャトラ :
シャル! がんばって!
シャルロット :
うぅ……バカンスなのに……どうして……こんなに……しんどい思いを……
バカンスなのに‼
ヨナ :
ジョギングが終わったら、軽く筋トレね。
シャルロット :
地獄か、ここは⁉
ヨナ :
準備は万端!これ以上ないくらい体調は整ってるはず!
イズネ :
たしかに体の調子はいいですね。
ビスケッタ :
温泉つかる必要ないくらい元気あるヨ。
コング :
温泉の防衛は俺たちに任せてくれ。
ホメ様 :
ホットスプリングにヴィクトリーしてください!
ゴエモン :
チッ! しかたがねぇ。サックスでも吹いてるか……
キャトラ :
よし! 入るわよ!
シャルロット :
うへぇ……
:
11
ビスケッタ :
レッツ入浴するネ!
イズネ :
ふぅ……気持ちいいですね……
ヨナ :
体の健康具合はどう?
ビスケッタ :
お湯からあがっても、特に変化ナッシング!今のボクはパーフェクト健康体だヨ!
イズネ :
私も平気です。
ヨナ :
私も大丈夫!これでレインボー湯の効能にも打ち勝てたはず!
シャルロット :
ふぅ……
ビスケッタ :
おい、シャルロット、おめーもお湯からあがってみ。
シャルロット :
うわ、ダメだ。死ぬほどダルい……
ヨナ :
シャルロット‼
どうして⁉あれだけ健康的な生活してたのに!
シャルロット :
甘いな、ヨナ。あたしの不健康っぷりは、一日程度でリセットできるわけねーんだわ。
ビスケッタ :
ドヤりながら言うことじゃねーヨ。どうすんだヨ、おめーのせいでレインボー湯に勝てないヨ!
シャルロット :
ふぅ……体の調子がいい……
ビスケッタ :
こいつ、温泉、楽しみはじめたネ。
キャトラ :
普段から自堕落な生活しすぎなのよ!
シャルロット :
まーね、あたしも健康が大事ってのはわかるんよ。
でもさ、健康のために毎日早寝早起きして、野菜食って、油っこいものとか甘いモノは食べない……
それって人生楽しいか?
ヨナ :
慣れれば別に苦じゃないし、私も常に健康的な生活ってわけじゃないし。
シャルロット :
慣れればってことはさ、我慢してるってことじゃん?うまいビーフ食って、ダラダラしたいって心の底では思ってるわけだろ?
ヨナ :
まあ、それはそうだけど……体調管理は大事だし。
キャトラ :
そうよ。将来的に病気にかかったり……
シャルロット :
今のことは今考えろよ!明日のこと考えられるほど、瞬間、不真面目に生きてねーんだよ!
あたしはいつだってこの目の前の今に!全力なの!だから、将来とか先のこと考えてるほど余裕ある生き方してないんだわ!
イズネ :
(なんとなくいいことを言っているように聞こえますが……)
トワ :
(結果、ダラケていては、意味がないのでは……?)
ヨナ :
……まあ、そういう考え方を否定はしないけど。
ビスケッタ&イズネ&トワ :
(諦めたネ)(諦めましたね……)(諦めました)
ヨナ :
……シャルロットの不健康さで、どうやってレインボー湯に打ち勝つって言うの?
シャルロット :
みんな、健康、健康、言うよな。なんか、そういうの、最近、流行ってるみたいだけど……
不健康な生活送ってる奴から言わせてもらうと、そういう健康の押し付けって、それだけでストレスなんだわ。
そういう健康の押し売りがあたしらを更に不健康にしてるって自覚ある?
ビスケッタ :
醜い逆ギレだネ。
シャルロット :
この温泉もそうだぞ!おめー、聞いてんのか⁉
イズネ :
今度は温泉に絡み出しました……
シャルロット :
おめーはあたしらのこと、健康にしてやってるとか思ってっかもしんねーけど、逆に不健康になってっから!
お前の効能はな、あたしらみたいに逆に健康な人間を不健康にしてんだよ!
トワ :
逆に……?健康……?
キャトラ :
なにこれ⁉まさか、温泉がダメージ受けてるの!
ヨナ :
あんな屁理屈で⁉
イズネ :
不健康が健康に打ち勝つということですか?
シャルロット :
多少寝不足でも運動不足でも、自然な状態が一番そいつらしい健康体!
あたしにとって健康な状態は、むしろ不健康なんだよ!この湯の効能が健康にするってことなら、今すぐあたしを健康な体にしてみろーーーー‼
ヨナ :
屁理屈で押し切った⁉
シャルロット :
さーて、いっちょやったりますかね。
うわ、お湯からあがったら、体、ダル……
一同 :
(結局、不健康じゃん)(結局、不健康だネ)(結局、不健康ですね)
:
12
レインボー湯の精霊 :
健康は……金で……買え……ない……
シャルロット :
よっし!やっぱ自堕落な生活が最強!
ヨナ :
……釈然としない。
ホメ様 :
ノットワビサビ!
イズネ :
温泉ゾンビが……
ビスケッタ :
おめーら、戦ってたのかヨ。
ゴエモン :
長風呂すぎて待ちくたびれちまったぜ。
ビスケッタ :
すげー数だヨ。こんなの突破するなんて……
コング :
ここらが限界だな……
ゴエモン :
ああ、この温泉怪盗様が、まさかゴールデンの湯の一番風呂を盗めねーとは思わなかったぜ。
ホメ様 :
風呂は一番♪あなたもハニカム♪
コング :
行け、キャトラ。
俺たちはもう限界が近い。温泉卵を食べたい……
ホメ様 :
湯もみしたいですね!みなさんはゴーアヘッド‼
ゴエモン :
とっとと行きやがれ!この温泉怪盗様が一番風呂を譲るって言ってんだ!
シャルロット :
おっさん……
ヨナ :
わかった。ここは任せる。行こう、みんな。
イズネ :
御武運をお祈りします。
ビスケッタ :
おめーら、超ワザマエだったヨ。
トワ :
失礼します。
キャトラ :
負けんじゃないわよ!アンタたち‼
コング :
行くか。温泉卵を食え……
ホメ様 :
温泉をエクスプロージョンです。湯もみしたいですね……
ゴエモン :
間欠泉ごとゾンビを吹っ飛ばすぞ!
これが温泉怪盗の!あ、活躍よ〜‼
ホメ様 :
すごいサウンドです。地面がウェイブします。湯もみしたい。
コング :
サックスで間欠泉を吹き出させるとは、さすが温泉を知り尽くした男だ。温泉卵を食おう。
コング&ゴエモン&ホメ様 :
ホットワビサビ!それでこそ俺のファミリーだ!これが俺の一番風呂だぜ……
キャトラ :
ゴエモーーーーーン‼
:
13
ビスケッタ :
それで、ゴールデンの湯はどこにあるんだヨ?
トワ :
こち……ら……です……温泉卵……ぐっ!
イズネ :
トワさん、大丈夫ですか⁉
トワ :
まだ、どうにか……
イズネ :
無理しないでください。
トワ :
大丈夫です……先を……急ぎましょう……湯もみ……
ユバーナさんから聞いた場所は……この辺りの……はず……です……
シャルロット :
てかさ、ゴールデンの湯って願いを叶えるんだろ?どうやって打ち倒すんだ?
ビスケッタ :
この騒動を止めろって頼めばいいヨ。
シャルロット :
でも、それって誰か一人でもよくね?他の奴は自分の願いを……
イズネ :
ここは公正に行きましょう。みんなで、この騒動の終息を願うべきです。
キャトラ :
そうね。アタシもカニカマをお願いしたかったけど我慢するわ。
シャルロット :
しゃーねーか。あたしもビーフは我慢する。
トワ :
ありました!あれが……
イズネ :
ゴールデンの湯⁉
トワ :
ぐっ! 湯もみ……
イズネ :
トワさんの限界が近いです!早く着替えて温泉に入りましょう!
ヨナ :
この温泉……
ビスケッタ :
……今まで以上に……気持ちいいネ……
シャルロット :
眠く……Zzz……
イズネ :
……温泉で寝るのは……危険……
キャトラ :
Zzz……
トワ :
……あ、温泉卵食べたい。
一同 :
Zzz……
トワ :
……ゴールデンの湯の効能はお湯につかった者の願いを叶えます。
現実ではなく夢の世界で……
Zzz…………
:
14
イズネ :
あれ? ここは……?
アピス :
イズネ、どうしたんだ?
イズネ :
センセイ? あれ?どうしてドミティア島に?
シロー :
イズ姉さん、早くメシにしましょうよ。
ペルマナ :
はい、夕飯、できましたよ。
クロカ :
よーし! 腹いっぱい食おう!
ピラウ :
食べすぎるなよ。
イズネ :
……あの、私たち、旅行に行ってませんでしたか?
アピス :
なにを言ってるんだ、イズネ。いつもと変わらず、穏やかに暮らしているだろ。
イズネ :
……そう、ですね。はい、変わらぬ日常はそれだけで価値があるかと。
ビスケッタ :
寄らば斬るヨ‼
悪党 :
ぐわわわわ!
ビスケッタ :
安心するがいいヨ。またつまらぬモノを峰打ちしちまったネ。
ミトラ :
超助かったよー!
カクリア :
さすがはビスケッタさん。
シルファ :
……尊敬します。
ビスケッタ :
苦しゅうない。もっとボクを褒めるネ。
シルファ&ミトラ&カクリア :
ビスケッタ!ビスケッタ!つーよーい! つーよーい!
ビスケッタ :
ボクの実力と名声さえあれば、シショーのオンボロ道場も安泰だヨー!
ショップ店員 :
こちらの服なんかは、いかがでしょうか?
ヨナ :
え⁉ ちょっとヒラヒラしすぎじゃない?私には似合わないんじゃあ……
ショップ店員 :
絶対似合いますって!お客さん、おかわいいんですから!
ヨナ :
え⁉ でも、私、傭兵だし、その、こういう女の子っぽい服は……
ショップ店員 :
でも興味はおありなんですよね?
ヨナ :
無くも無いけど……いや、でも無理無理!こういう服、絶対似合わないから!
ショップ店員 :
絶対似合いますって!お客さん、かわいいですし!
ヨナ :
ほ、本当に似合うかな……?
ショップ店員 :
絶対に似合います!さあ、勇気を出して!
ヨナ :
わかった!着てみる‼
シャルロット :
いやっふぅぅぅぅっ‼
ビーフ&ビーフ!そしてビーフ‼もっと肉持ってこーーい!
執事 :
御子様、お食事の後は、最高級羽毛布団でおやすみください。
ヴィストリニルグ :
私の羽毛百パーセントです。
シャルロット :
トリ公、お前、そこまであたしに忠誠を……めちゃくちゃ感動した……
ヴィストリニルグ :
御子様に忠誠を誓っているのは私だけではありません。
オウガ :
シャルロット様、荒野の民も全てあなたの忠実な配下……
シャルロット :
ふっ……
アッハッハッハ!これはもうあたしの時代、到来してんじゃん!
ビーフ持ってこい!ビーーーフッ‼
:
15
一同 :
Zzz……
温泉神 :
ふははは……
愚かな人間どもめ。貴様らも温泉のことしか考えられぬ体にしてくれる……
イズネ :
…………
アピス :
どうした、イズネ。
イズネ :
やはり違和感があります。
穏やかな日常は私の望みです。ですが、島長としての職務を全うすることも私にとって大切なこと……
毎日、自分の至らない部分を痛感し、反省しながら日々を送っています。
自分の能力の低さから来る不安もあります。でも、不安があるから人は備えられる。不安の分だけ人は前に進めるんです。
不安も何も無い穏やかなだけの日常など、そんな都合のいいモノ、あるはず無い……
アピス :
なにを言ってるんだ、イズネ……?
イズネ :
自分の頬を張ってみましたが、痛くありません……
これは夢ですね。
はっ‼
眠っていた……⁉みなさん、起きてください!
シャルロット :
うぅ……ビーフ……ん? あれ?
ビスケッタ :
ふぁあ……ドージョーの看板は……あれ?
キャトラ :
……アタシのカニカマは⁉
ヨナ :
……眠らされていたの?
温泉神 :
おとなしく眠ったまま我が傀儡となればよかったものを!
キャトラ :
アンタが温泉の神様ね‼
温泉神 :
そのとおり! 我こそは、温泉神<[AC0D0D]ゴールデンの湯[FFFFFF]>である!
シャルロット :
ちょっと待てよ!願いを叶えるって、さっきの夢のことか⁉
ビスケッタ :
そんなの詐欺だヨ‼
シャルロット :
温泉詐欺じゃん!
ビスケッタ :
ぜんぜん願いとか叶ってないヨ!こんなの実質、効能ゼロだネ!
温泉神 :
好き勝手言いおって‼我が僕よ‼
トワ :
……温泉卵……
温泉神 :
貴様らはいつでもそうだ!己の欲望のために温泉を利用し!感謝を忘れる‼
イズネ :
なにを言っているのですか?
温泉神 :
もはや語る言葉も無い!我ら温泉の傀儡となり‼
温泉への感謝を思い出すがいい‼
ヨナ :
みんな、気をつけて!来る‼
シャルロット :
あたしのビーフを返せぇぇっ!
ビスケッタ :
寄らば杖でワザマエ‼マギアス・エンゲージ‼
イズネ :
みんなを元に戻します‼
:
16
温泉神 :
ぐわーーー!なぜだーーーー‼
イズネ :
どうして、温泉ディストピアを作ったのですか?
あなたは、この島の方々にとって信仰の対象だったではありませんか……
温泉神 :
…………
……私は温泉の神として崇め奉られていた。
昔は良かった。誰もが正しき温泉マナーを守り、温泉への感謝を忘れなかった。
だから私も守り神として、温泉につかる者たちに恩恵を与えてきた。
だが、この島は変わってしまった……
私の与える恩恵を金に変え、商業主義に走った。それだけならいい。だが、彼らは大事なことを忘れていった。
きちんと湯にもつからず、温泉マナーを守らず、自然への感謝を忘れ、観光地としての開発を進めていったのだ。
誰もが温泉への信仰心を失っていった……
シャルロット :
だからって温泉ゾンビにするのは、やりすぎだろ?
温泉神 :
この島の温泉の効能は、私の力。言うなれば信仰の力である。信仰が失われれば、ただの湯に変わろう。
そうなれば、この島は再び寂れる。それこそ私を失うことで、以前よりも悲惨な状況になるだろう。
このユートピアをディストピアに変えてでも、私は島の者たちを守らなければならなかったのだ……
……温泉の神として。
イズネ :
温泉信仰を守るための手段だったと?
温泉神 :
左様。まあ、私を忘れた者たちへの怒りもあったがな……
だが、私の負けだ。願いを叶える湯として、皆を解放してやろう。
トワ :
うっ……元に戻ってる……?
ヨナ :
このままだと、この島の温泉はただのお湯になるの?
温泉神 :
信仰を忘れれば、いずれ私という存在も完全に消えるだろう。
島の者に伝えてほしい。温泉の使徒たちよ。
温泉への感謝を忘れず、マナーを守り、じっくり湯につかれ、と。
湯冷め、湯当たりに気をつけ、温泉を愛せよ、と。それが信仰である。
イズネ :
伝えます。正しき温泉マナーを。
ビスケッタ :
消えちまったかヨ……
トワ :
そのようですね。
シャルロット :
よくわかんねーけど、一件落着ってことか?
ヨナ :
とりあえずはね……
トワ :
いえ、真の戦いはこれからです。正しき温泉マナーを伝え続け、この島の温泉を守らなければなりません。
キャトラ :
そうね。
トワ :
ですが、その前に、ゆっくりこのゴールデンの湯につかりましょう。
温泉を愛する者として。
一同 :
ふぅ〜……
……いいお湯……
:
17
どうにかゴールデンの湯に打ち勝ち、温泉ディストピアからみなさんを解放できました。
ボクたちが街に戻った頃にはみんな、元に戻ってたヨ。
兄さんたちは温泉ゾンビだった頃の記憶を失っていて、なにも覚えていなかった。
なんだかんだで、おっさんたちも無事だったっぽい。
温泉神様からの伝言を島の方々に伝えたところ、とても反省なされてました。
島の発展のため、大切な温泉への感謝を忘れていた、と理解したみなさんは……
温泉オリエンテーリングを中止し、正しい温泉の楽しみ方とマナーを観光客の人々に伝えていくと約束してくれました。
ビスケッタ :
これにて一件落着!
……したのはいいけどヨ。優勝商品はどうなったヨ?
シャルロット :
そうだよ! それ!超高級食事券とか‼
イズネ :
あとで正式にいただけるそうです。今回の事件を解決したお礼も込みで。
シャルロット :
いやっふぅぅぅっ!飲んで食って騒ぐぞーーー‼
ヨナ :
シャルロット、あまりハメは外さないでね。
シャルロット :
旅の恥はかきすて‼もう温泉はいいから、うまいビーフだけ食って寝る‼
キャトラ :
なんやかんやで疲れたわね。一生分の温泉につかった気がするわ……
イズネ :
そうですね……
クロカ :
みなさん、こんなところでなにしてるんですか?
シロー :
温泉回りましょうよ!
イズネ :
またですか……?
ミトラ :
ビスケッタじゃん!めちゃいい温泉みつけたんだけど一緒に行こーよ。
カクリア :
寿命が伸びるそうです。
シルファ :
……ゆっくりつかりましょう。
ビスケッタ :
……もう死ぬほどつかってきたよ。
レイガ :
よーし! ヨナ、シャルロット!傭兵団の温泉めぐりを続けるぞ!
ヨナ :
……私は遠慮しとく。
シャルロット :
……あたしもパス。
アイリス :
キャトラ、泡がいっぱい出る温泉があるんだって。一緒に行かない?
キャトラ :
…………
一同 :
もう温泉はこりごりだーー!
トワ :
私はまだ行けます。ぜんぜん足りないくらいです。
キャトラ :
…………
トワの温泉モンスター‼
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